南三陸の風

耳が痛い。こんな風は大阪では吹かない。

眼前は、美しき絶景、松島だ。波が揺れている。

僕と彼女、そしてもう一人は最も信頼する友達。

3人は高台に立っていた。ここから見える風景はのどかだ。

「 こんな処やったらゆっくりしたいなぁ~ 」

「 そやね。最近こんな時間ないもんね。」


J氏は寡黙だ。だが昨日今日と様々な話をした。

時間は12時を過ぎている。

「 何かたべよか? 」

「 何処行く? 」


「 任すよ~」


近くの定食屋さんに入った。ここも禁煙、少し辛い。

たまには、マナーを守ろう。大阪ではタバコを手放さない。

「 かきフライ定食にする~~」

僕はすぐに決まる。二人はまだ迷っていた。

「 私も同じにする。」

「 では、僕も。」


主体性の無い奴らだ。ここはグッと口を閉じた。

Jが注文する。

「 かきフライ定食3つ御願いします。あと焼き牡蠣を3皿と。」

御客さんはまばら、数分で出てくる。

サクサクの揚げたて・・・何でやねん? 全部美味いやんか・・・・
負けとる。天下の台所はもう死語か。


「 不思議やなぁ。味付けが四国に似てるんやろか?」

「 ちょっと濃いめやもんね。」

暖房が良く効いたのんびりした日曜日だった。

「 次、南三陸町行きます。1時間位です。」

「 御願いします。」

僕らは車に乗り込んだ。AUDIOからは静かに山部善次郎が流れていた。

窓から流れ行く景色を見ながら少しずつ無口になって行った。

「 このナビ、いつもAVシステムって出るけど何か変やと思わへん?」

「 何がよ。言うてる意味が解らへん。」


「 ほやって、AVやろ~アダルトビデオちゃうんか? 」

「 あんたってホンマアホやな。しゃべらんとき!!」


怒られてしまった。仕方が無い。暫く沈黙しよう・・・・

Jは苦笑いしている。少しうけたのかも知れない。

空気が重い。だんだん脳が麻痺してくる。

荒れた区画、境目も無い。窓が無い。赤い骨だけの3階建。

現実か・・・幻だろうか。

「 J、花束買わなあかん。」

「 あっ、忘れてる。コンビニよります。」

冷静な彼にしては珍しい。
僕らと同じ感情に支配されているのかも知れない。

「 あれが、最後まで残って多くの人々をアナウンスで助けた女性のいたビルです。」

そこに建物は無かった。鉄骨が数十本塩で錆びて土からはえている。

それだけしか残っていない。

僕とJがライターでお線香に火を付けた。

手のひらを合わせるのが精一杯だった。

ふり向くとアベックの笑い声が聞えた。
精神が揺れる。

駄目だ。お前が此処で行動する事は許されない。

もう一人の自分が、僕を制御する。


「 行こうか・・・」

僕らはその場を離れた。

この光景を眼に焼き付けながら・・・・

車のスピーカーから、どんとの声が放たれていた。

「 あこがれの地へ 」 
  
 地獄でもない~天国でもない~
  
        旅の途中の人よ~~


珍しくJが僕に聞いた。

「 これ誰の曲? 」

「 これな、ボ・ガンボスって言うてな、京都のバンドや。
  ええ詩やで~この世の向こうの事歌ってる。」


眼下に黄色のゼッケンのボランティアの人々がしきりに土を掘っていた。

「 あれ、何しとんやろか? 」

「 遺品探しとんちゃう。」

「 僕もそう思います。」

「 そうなんや・・・・・」

探しても探しても見つからない、でも諦めない。

厳しい自然に打ち勝ってきたここの人々、笑顔が眩しかった。

写真集を買った。地元のカメラマンの人が映した写真だ。

去年の春に咲いた桜の映像、残酷にも見える。

そうじゃない。こんな過酷な事象にも耐えた、不死の桜だ。

この地を知り尽くした方の写真。 指を動かすのにどれ程の気力が必要か・・・・・

そこには彼の全てが凝縮されえている。この光景を残さなければならない。

想いを馳せると堪らない。見事な意志。

シャッターを押す勇気に尊敬の念を憶えます。その名も、

  「 千本桜 」   

大沼英樹さん、一人でも多くの方々の眼に届くよう願っています。
 
       6月、夏はもうすぐです。 
          

               by Yasuki 




http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=lpDfjsQo4PU

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=JdN8_7K5UHA

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