惜別の季節

2月。惜別の季節です。

それがどんな形であれ、湧き上がる心情を押える必要はないと思います。

全ての事象には始まりと終わりが在ります。


数年前のお話しです。僕は、長期出張を控えプレッシャーを抱えていました。

回る都市は、十数か所。スケジュール表を見るとそのハードさは明らかです。

僕は数えてみました。11日間で、十六回飛行に乗る・・・・・

オフは一日だけです。

出発前、祖母は危ない状態に陥っていました。

母親と相談します。

「 どやろ? 行ってもええやろか? 」

「 Y。ばぁさんはまだまだいける。気にせずに行きなさい。」

母なりの配慮です。僕は、頭の中でお礼を言いました。

 “ ありがとう。取りあえず、行くしかない。待っててな・・・・”

出発当日です。関空のdepartureのボードを二人で見上げて茫然となりました。

同行のF氏が動揺しています。

僕らの乗る予定の飛行機が、Cancelになっていたのです。

F氏が直ぐ様、会社に連絡をいれます。


「 飛行機が欠航になってる。すぐに代替え機探して!!」


いやなムードです。

僕はカウンターに行き自家談判を始めました。

「 ロスのドメステイックは決まっています。 乗れなければ全てが狂ってしまう。
何とか間に合うように手配を御願いします。 」


カウンターの女性がキーボードを、素晴らしい速さで叩いています。

F氏はいまだ、電話中。女性が言いました。

「 Y様、ちょうど1時間遅れの便に空席が在ります。その便で手配を致しましょうか?」

「 ロスでトランジットが在るんやけど、到着からどれ位の時間が在りますか?」

「 1時間15分程です。」


僕は驚いた。間に合うはずがない。

「 その時間で、入国審査をして飛行機に間に合うでしょうか? 
私は無理だと思うのですが? 」


「 おっしゃる通りです。ただその便しかございません。急げば間に合うかと存じます。」

まるで他人事です。しかし選択肢は在りません。

「 Fさん。イチカバチカ行きましょう。これは不可抗力です。他に手段が無い。」

「 そうですね。行きましょう。」

3時間後、僕ら二人は機上の人になっていました。

Arriveにはディレイはありません。定刻通りです。

ただ最大の難関が待っていました。

入国審査の列を見て、僕らは唖然とするしか在りません。

長い行列・・・・・

「 F氏、まずいなぁ~時間ないんちゃう? 」

「 社長、取りあえずやってみましょう。」

イミグレーションを抜けて時計を見ると、30分を切っています。

「 F氏、走ろ!!」


「 はい!!」

結局、搭乗ゲートに着いたのは出発の5分前でした。

「 F氏、もう疲れるなぁ~~」

「 すみません。本当に申し訳ないです。」

「 いや~謝らんといて下さい。 まだまだこれからです。」

そんな感じで始まった出張でした。

仕事中は集中しています。プライベートは考えません。
そして帰国しました。

心身共に疲労しています。

ただそんな事は言っていられない。

「 今、帰ったよ~~ばぁちゃんどんなん? 」

「 Y、出張中やったから言わんかったけど、危篤や。」

母が答えます。その心使いに言葉が在りません。

帰宅して落ち着いたのは、夜の8時を過ぎでした。

「 今から帰るわ。 」

「 いや、今日は休んどき。明日でいいよ 」

楽観的な言い方です。

「 大丈夫。すぐに支度する。」

何が在るか解らない。予断を許さない状況です。

実家は徳島、140KMの距離、出張の事を考えたらわずかな道程です。

実家には寄らず、そのままお寺に向かいます。

祖母の家です。

「 おっちゃん~ばぁちゃんどんなん!! 」

「 Yか、びっくりする。いつ帰ったん? 」


「 さっき。ばぁちゃん悪いん?」

「 そうやな、よう持って2~3日か・・・・」

部屋に行くと祖母は沢山の管に巻かれていました。

意識が無い。付き添いの女性に聴きました。

「 いつからこんなんですか?」

「 Yちゃんが、行ってすぐ位からです。ちょっと呼びかけてみて。」

「 ばぁちゃん~~Yやで、帰って来たよ~~」

微かに口元が反応します。微笑み。

「 初めてや!!」

女性が驚いている。うっすらと瞼が開きます。

「 ばぁちゃん、解る?? 」

「 Yか~いつ帰ったん?」

10数日ぶりの声だったそうです。

「 さっきやで。頑張ってよ~~」

返事は無く、そのまま寝てしまいました。

父親、母親、そして姉がやって来ました。

父が言います。

「 どんなんや? 変わりないか?」

「 うん、さっき一瞬意識が戻った。でもすぐ寝てしもた。」

「 そうか・・・一応解ったんやな。」

「 うん。」

午後11時半を回っています。

「 今の処、落ち着いてる。今夜は帰るわ。」

母と姉、それに父親が帰って行きました。

僕は、ビールを飲んでいるので帰れない。
叔父と話をしていました。

両親と姉が帰って15分位でしょうか?

大きな声が聞えます。

「 住職~~はよ来て!! 」


僕と叔父は、部屋に駆けつけました。

呼吸が浅い。血圧がどんどん下がって行く。

「 ああ。終わりやな。」

叔父が言いました。

みんなが呼びかけています。僕はその光景を見ているだけでした。

 “ ばぁちゃん、待っててくれたんや・・・”

そしてそのまま、静かに旅立ちました。

長年、看病した母親と姉には僕自信の言葉で伝えました。

「 かぁさん。終わってしもた・・・・」

母は電話の向こうで崩れ落ちました。

享年、96歳。大往生でした。

お別れはいつも、寂しい。いい事なんてない。

ただ一つだけ解る事が在ります。

家族、と友人の暖かさです。その人の本質が見える。

これ程重要なものは無いのではないでしょうか。

生きて生きて、生き抜いて、先立つ方々を見送る。

そしてその人を時々思い出す。


僕らにはそれしか出来る事は在りません。

思い切り泣いてあげて下さい。我慢する必要なんか無い。

そしてその人の分まで生きて下さい。

あなたを待っている人々が沢山います。


僕は話しがしたい。他の誰でもない。あなたと・・・・
 
                             
  
                                  by Yasuki 
                  

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