開戦前夜・・・何かが始まる!!!

かつて帝が君臨し今も雅な風情を持ち続ける都。

街角に男が立っている。端正な顔立ち、白粉をぬれば昔の公家のようだ。

実際縫っていた。顔は真っ白で眉毛はない。

服は濃いエンジ色のビロードのコート。

靴はクロコダイルのブーツ。

髪は背中の中程迄伸びた長髪だ。道行く人々は彼を避けながら通り過ぎる。

時代錯誤もはなはなだしい。別に勘違いをしている訳では無い。

規準はただ一つ。美しい服しか着ない。美しいものしか手にしない。

全てがデザイン。美しい音しか耳に入れない。筋が通っている。

7月の下旬。残酷な程の炎天下。

遥か遠くに男がノロノロと足を引きずるように歩いてくる。

ビロードはすぐに気が付いた。
   
「 あいつだ 」  

上着は黒のTシャツ一枚。汗で身体に張り付いている。

ひとかけらの無駄も無い素晴らしい肉体。

ストリート・ファイトをさせたら恐ろしく強いに違いない。

褐色のサイボーグのようだ。肩には鮮やかな赤のギター。

まだここまでは少し距離がある。ビロードは危ぶんでいる。脱水に間違い無い。

そのまま歩き続けたらここまで辿りつけないだろう。

こちらから近付く事は全く頭にない。

この男の頭脳にはもともとそんな思考回路が存在しない。

日が陰り始めている。かなりの時間が過ぎた。褐色が近付いて来る。

間近かで見ると、Tシャツはぼろぼろで、Gパンとスニーカーは擦り切れている。

骨と皮それに筋肉。脂肪はゼロ。今にも倒れそうだ。

ただ眼球からは獣のような鋭さが放たれている。 
 
 「 来たぜ 」  

そう言って褐色の男は意識を失い倒れた。

ビロードは仕方無くもう一人の男と二人で自分の家に運んだ。
 
「お客さん連れてきた~けど意識ないし、臭いしどないしょーか?」
 

「取りあえず近所のお医者さん呼ぶから待っといて。
 それからご飯食べさせて風呂にいれたろ~
凌ちゃんらもお腹空いたやろ~
何か作るからちょっとまっといて。 」  


母は冷静。いつも変わらない京女だ。すぐに町医者が来た。

「 大分脱水で弱っとるなぁ~。ほやけどこの身体やったら大丈夫。
一応点滴しとくから、眼ぇ開いたら少し水飲ましたって。
ほんで十分や。」


呑気な医者は二日酔いで下駄をカラカラ鳴らしながら帰って行った。

男は3日間眠り続けた。

 「また光か・・・一体いつまで続くんだ?何処までオイラを追いかけたら
  気が済むんだ!!もういい加減にしろ!!」


悪夢で目が覚めた。ここは何処だろう・・・。ひどい頭痛が襲って来た。

誰かの気配。

襖がすーっと開き自分の脳の奥まで見ているような眼をした男が入ってきた。

凌が尋ねる。

 「ホンマよー寝たなぁ~。桂次、覚えてるか俺や」

「 お前に会う為に来たんじゃねえのかよ!!」


桂次の頭の中で血液が恐ろしいスピードで走り回っている。
 
 「話なんかどうでもいいから薬をくれ!」

近くにいたお母さんが薬を2錠わたそうとした。

桂次は眼にも止まらぬ速さで12錠のうちの1シートを引ったくった。

そのうち半分をバリバリ噛んで飲み込んでしまった。そのまま爆睡。
  
「 おかぁちゃん、こいつキチガイや。話ならへんわ~」
  
  
「まぁそういわんともうちょいゆっくり見たろ~」


母はまたもや冷静だった。やはり女だった。

独特の勘で何かを感じているのか・・・  

       
         by Yasuki                                 

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